東京ロータリークラブにて
地域コミュニティーの安心・安全
~協会の活動、「移民とコミュニティー」の問題~
ご紹介にあずかりました佐伯でございます。本日は
恵比寿ロータリークラブの会合にお招きを賜りまして、
大変光栄に存じます。今日は国際安心安全協会の理事長
として我々の活動を知っていただくと同時に、我々の活動に
関遵いたします最近のトピックを若干お話させていただき
たいと思います。
国際安心安全協会は平成16年に元警察官僚である
初代理事長の池田勉氏と専務理事の薮崎英源氏が、
地域で子供が被害に遭ったり、女性に対する痴漢被害や
暴行の件数が増加していることに鑑み、何か地域コミュ
ニティーを安全に保つメカニズムはないかということで
すでに故人となられた後藤田正晴さんと協議、あるいは
協力を得て、当初は各地域での警察官OBを中心とした
任意組織として発足しました。その後、各方面のさまざまな
影響力を行使できる方々から少しずつ賛同を得て、平成
18年にNPO法人として認可をいただき、今日に至って
おります。
我々は子供の安全、女性の安心をテーマに、地域コミュ
ニティーの安全に貢獣する地道なボランティア活動を
行っております。具体的な犯罪が行われた場合には
公権力である警察や検察に対応してもらわなければ
いけませんが、日々の中には警察を呼ぶまでではない
ものの、常識外れの迷惑行為を未然に防ぐといった地域
コミュニティーを安全にしていく行為や、事故や犯罪が
行われる可能性を低くする生活環境の整備など、地域
コミュニティーが自分たちで何とかしなければいけない
テーマがいろいろあります。そういう活動を「形」にして、
それを後押しするのが我々の役割でございます。しかし、
たしかに安心安全は犬事ではありますが、江戸時代に
あった五人組という巡帯責任制度のように常に誰かが
誰かを監視しているような息苦しい社会を作っては
ならないと考えております。シンガポールという国は美しくて
清潔でビジネス環境も整っていますが、チューインガムを
持ち込んだだけ22でも犯罪になります。大型ごみを捨てたら
裁判所に拘束され、落書きをしたら鞭打ちの刑が待って
います。何年も暮らした人の実感では非常に厳格な管理
社会だそうです。私は3年間スイスに暮らしていたの
ですが、どの町にも2階の窓から近所を監視している
年配の女性がいて、自分の家の前でなくても違法駐車を
見つけると警察に電話をします。あちらの街並みの写真を
見ると家のベランダにお花がきれいに飾ってありますが、
あれは建物の美観を保つために飾らないと前の家の人
から怒られるんですね。洗濯物を外から見えるところに
干しても駄目です。我々の感覚ですと、「自分で稼いで
自分で買った家なのに、他人からなんで文句を言われな、
あかんねん」となりますが、あちらはそうではない。非常
に管理された社会です。我々がそれを望むかというと、
たぶんそうではないと思います。やはり、ノビノビした自由の
空気と秩序ある安心安全の社会の共立を目指したいと
我々は考えています。それには地域の人たちが自分たちで
考えて、地道に行動していくという方法しかないのでは
ないか。我々はそういった気持ちを持った人々を発掘し、
同じ思いを持った人たちによって国際安心安全協会の
支部を作って、組織化されたグループに支援を行って
おります。また、いろいろな地域安全に関する調査研究を
実施し、しかるべき機関へ政策提言を行っております。
一例では、地域活動をスムーズに行うための安心安全
チョツキを配っております。これにはユニフォーム効果
があって、活動する側は使命感や連帯感、言い出す勇気
というものが湧いてきます。たとえば、近くで子供が非常に
危険なことをしている、あるいは未成年が違法スレスレ
のことをしている。「危ないよ」「止めなさい」と言うべき
ですが、他人からはなかなか言い出せません。しかし、
ユニフォームを着ると、それができるようになります。また、
言われる側にも、何となく公共性や権威、公平さを感じ
させることができます。たかがチョッキと思われるかも
しれませんが、されどチョッキであって、地域コミュニティー
の安全を確保していく上で明らかに効果があります。
我々の活動は参加していただく方の完全な白由意志に
よるボランティアです。現在、新潟、山□、九州地区など、
少しずつ支部が増えており、全国に地域コミュニティーの
ネットワークを作りたいと思って活動しております。しかし、
資金は企業や有志から“貧者の一灯”的な寄付に依存
しており、財政的には基盤がまだまだ脆弱でありますので、
その段階ではございません。こういう形でお話しさせて
いただきますのを契機に、ロータリークラブとして、あるいは
個人として、目に見える形、目に見えない形、さまざまに
ご協力いただければ幸甚でございます。
最後に、我々の団体に関連する最近のトピックとして、
外国人移民と地域コミュニティーの問題に触れたいと思い
ます。我々は3年半ほどの問にヨーロッパのEU代表部、
スウェーデン政府、イギリス政府を訪ねて地域コミュ
ニティーの実態を調査いたしました。我が国では移民、
とりわけ非熟練労働力を受け入れるべきかについて賛否
両論あります。私はどちらかに誘導する考えはござい
ませんが、地域に外国の方が入ってくるのは大きな流れ
だろうと思います。宗教、文化、習慣、自分たちとまったく
異なる常識を持った人々が地域に入ってくるとき、地域
コミュニティーとしてどのように対応すればいいのか。
今、ドイツの全人□に占める外国生まれの人の比率は
12.8%、移民大国であるアメリカは13.1%、スウェーデンは
それを上回る16%になっています。仲び率もOECD諸国
は全般的に右肩上がりですが、とりわけスウェーデンが
すごい勢いで仲びています。首都であるストックホルム
には、外国人コミュニティーがたくさんあるようです。そこで
スウェーデンの中央警察、これは我が国の警視庁に相当
しますが、そこの幹部と面談し、地域コミュニティーの安全
や移民問題にどう対処しているのかを尋ねました。すると、
彼らはスウェーデンが失敗したことを前提に、「日本が
もしも移民を受け入れるのであれば、キーワードは分散
です。移民は集中させては絶対駄目。そういう政策誘導
を最初からプランニングしてやるべきです。外国人集中
地域、外国人村とか、外国人タウンといったものを形成
させては治外法権的な無法地域になります。それは非常
に危ないですよ」と言っていました。
我々が考えなければいけないのは、その移民が日本
あるいは日本人との同化を望んでやって来た人かどうか
ということです。「お金をたくさん稼げて安全なところに
住みたいからで、私は日本人になりたいわけではあり
ません。日本の文化が好きなわけではありませんよ」という
人々を受け入れるかどうか、意見が分かれるところだと
思います。アメリカの場合は、アメリカ合衆国という国に
絶対的忠誠を誓わせるわけです。言葉ができるかどうか
ということも大事ですが、それ以上に、「お前がアメリカ人
になりたいなら、まずアメリカ合衆国に忠誠を誓え」と
厳格にやります。アメリカで野球やフットボールの試合を
観戦されたことがあればお分かりだと思いますが、必ず
皆が起立して国旗に向かって国歌を斉唱します。日本の
小学校で日の丸を飾っている教室を見たことはあまりあり
ませんが、アメリカでは例外なく小学校に星条旗が飾られて
います。こういった通過儀式といいますか、「アメリカ人に
なりたくてアメリカに来た」という確認行為を日本は一切
やっていません。移民の希望者に対して「あなた、日本人に
なりたいんですか、日本が好きで来たんですか」という
ことを聞くことさえはばかられるのが現状です。ただ、
賛否いずれの立場にせよ、今のままの受け入れ態勢では
あまりにもナイーブです。井の中の蛙状態です。これに
ついては、よく考えなくてはいけないと私は思っております。
いずれにしましても、そういう事態が少しずつ広がって
きますと、警察という公権力ではない我々のような地域
ボランティア活動、安心安全とか、地域のルールを守って
もらう活動の役割が大きくなっていくのではないかと
考えております。そこまで翼を広げるにはまだまだ組織
が脆弱でございますので、皆様の何らかのご支援を
いただければ非常に幸いと考えております。どうもあり
がとうございました。
2016年1月19日東京恵比寿ロータリークラブ
ほかの講演記録